昨今の電動歯ブラシについて

(歯科衛生士 山川まり子 歯科医師 猪野 潔)

私たちが電動歯ブラシについての検証をおこなってから、10年が経ちました。
当時は、将来的に電動歯ブラシはもっと使いやすくなり、電動歯ブラシを使う人も多くなっているだろうと考えていましたが、実情はどうなのでしょう。確かに、当歯科医院にお越しいただく患者さんの中でも電動歯ブラシをお使いになっている方は多くなっているように思います。そのほとんどの方が道具を手用歯ブラシから電動歯ブラシに持ち替えるだけで、「よく磨けるはず。」と思い使用しているため、その製品の取扱説明書を読んだ事がない方もけっこういらっしゃいます。

そこで、昨今の電動歯ブラシ事情に関し簡単にまとめてみました。

電動歯ブラシの種類を大別すると、「高速運動電動歯ブラシ」「音波歯ブラシ」「超音波歯ブラシ」の3種類になります。

「高速運動電動歯ブラシ」は小型モーターを利用しブラシヘッドを動かし回転、振動させます。「音波歯ブラシ」は高速運動電動歯ブラシに音波振動を加えたものです。「超音波歯ブラシ」は超音波パワーでプラークや口腔内細菌の連鎖を飛散させます。

最近の電動歯ブラシの主流は、「音波歯ブラシ」のようです。パナソニックから発売されているポケットドルツは小型で携帯しやすく、ファッション性も高いことからOLを中心に人気があったようです。音波振動によって生み出される液体流動力で手用歯ブラシや高速運動電動歯ブラシでは除去できないプラークを除去します。さらに歯ブラシの毛先が高速で動きプラークを除去します。ブラシ自体が動くので、手用歯ブラシのように自分で動かす必要はありません。電動歯ブラシの毛先を歯に当て、汚れ(プラークなど)が落ちるまで待って次に磨きたい場所に毛先を移動させます。この「待つ」という行為が大変重要なのですが、残念な事に手用歯ブラシのように自分でこすっている方が多いようです。また、その製品ごとの性能には差があるので、どの程度の時間「待つ」かは、様々だという事も理解する必要があります。さらに、「音波歯ブラシ」の音波振動を妨げないようにするために、毛先は歯に軽く当たる程度にすることも重要です。

「高速運動電動歯ブラシ」は、昔からあるタイプの電動歯ブラシです。歯に当てるだけで、自分でこする必要はありません。ブラシヘッドが動いて汚れを落としてくれます。

最近ではあまり見かけなくなった「超音波歯ブラシ」をお持ちの方は、歯ブラシ自体は動きませんから、手用歯ブラシのように自分でこする必要があります。

いずれの電動歯ブラシを使うにしても重要なのは「正しい使い方」であるという事は以前と同じです。電動歯ブラシを使う前には、必ず取扱説明書を読むようにしましょう。なお、人の手の感覚による細かな動きが必要な場合、「電動歯ブラシでは代用できない。」という事も10年前と変わりありません。